概要
マグロ一頭を卸す
僕の名前は、原口雄次。魚屋を営んでいます。今日は、マグロ一頭を、寿司屋で見られるような形に卸していきます。
マグロが届いたら、まずはマグロの質を調べます。調べる方法は2種類あります。コアリングするか、尻尾からサンプルを切ってみることです。尻尾の色は、マグロの身と同じ色をしています。
魚を捌く際に重要なのは、鋭い包丁です。包丁を研ぐことにたくさんの時間をかけています。そして、5本の種類の違う包丁ー柳刃、身卸出刃、出刃、牛刀、洋出刃を使います。
マグロにはビンチョウマグロ、キハダマグロ、メバチマグロ、本マグロの4種類があります。今日、卸すのは100ポンドあるメバチマグロ。ほとんどの場合、マグロの頭と内臓は船で取り除かれます。我々は、こうしたマグロのことをhngマグロと呼びます。
襟部分・背びれを取り除く
最初に襟部分を落とします。ヒレ部分を掴んで、襟部分からお腹の上の方にかけて包丁を入れていきます。骨は切りません。襟下にある肉を切っていくのです。切っていくのに力を入れる必要はありません。包丁を滑らせて骨に当てていくだけで切ることができます。必要なのは、刃の鋭さと速さだけです。
次にとても固い背びれを取り除いていきます。これを除かないと、今後包丁を入れづらいので、とても重要な作業です。僕たちは、マグロを卸す際に出るゴミの部分を使って、ツナコツラーメンというラーメンを作ります。背びれ部分だけが唯一使うことができない部位ですが、それ以外の肉、襟、骨、ヒレなどはラーメンを作るのに最適なのです。
5枚卸しにする(背中ロイン)
5枚卸と呼ばれる形で卸していきます。出刃を使って固い皮を切っていきます。
次に牛刀に持ち替えて、背部分を骨に押し当てるようにして刃を入れます。小さな洋出刃に変えて、皮を開いて背部分をお腹から離していきます。洋出刃は両刃のため片刃のものよりも浅めに入れられるため、真っ直ぐに包丁を入れるには適しています。
ここから牛刀に持ち替えます。牛刀は大きくて薄いため、骨をより感じることができます。背に近い部分に大きく切り込みを入れていきます。ここにある大きな骨はマグロ特有のものです。首の骨を取り除いて、背中ロインを切り取ります。
5枚卸しにする(お腹ロイン)
ぶ厚い、お腹ロインを取っていきます。腹ヒレと呼ばれる部分は、調理には適しておらず、多くのレストランでは使いません。私が魚の会社で働いていた時に、とてもたくさんの腹ヒレが捨てられていることに気がつき、そこから出汁を取ることを始めたのです。ここにはたくさんのコラーゲンが含まれており、とても美味しいですよ!
お腹ロインについても、背中ロインと同様の作業をしていきます。最初は皮を開きます。お腹は肋骨と強くくっついているので、背中よりも切るのが難しいです。また、肋骨はお腹の皮で覆われています。
骨を切り、背中とお腹を分けていきます。お腹側から切るのは難しいので、魚の方向を変えて対応します。お腹ロインは骨とくっついた状態で取り外します。血合い、骨は後で取り除きます。
5枚卸し(骨)
次は、底の部分から、ロインの時と全く同じ工程で骨を除きます。包丁を入れてまっすぐ切っていきます。違った方法で骨を取り除く人がたくさんいますが、僕はこの方法が好きなのです。包丁がどこにあるかがよく分かりますからね。
骨の下の肉を切っていきます。そして、出刃を使って、髄に付いている筋を剥がしていきます。尾側から頭にかけて包丁を入れながら骨を引っ張り上げて身の部分と分けていきます。
最後は首を切っていきます。ここはとても固いので、出刃を使って叩き切っていきます。
骨についた肉は後で取っていきますよ。
5枚卸し(完成)
背中ロインとお腹ロインの真ん中にある骨に沿って包丁を入れ、分けます。これで5枚卸の完成です。2つの背中ロイン、2つのお腹ロイン、骨、という風に分けました。そして、腹ビレ1つと襟部分2つも残してあります。
サクを作る(1)
1つのお腹ロインをサクにしていきます。お腹から骨を取り除きます。まな板の上だととても簡単にできますよ。骨に沿って包丁を入れていくだけです。
そして、肋骨、お腹の皮を取っていきます。なるべくお肉を無駄にしないように気をつけます。そして、まな板や周囲の環境を清潔に保つことも大切です。
マグロの中で最も脂ののった、ざぶとんと呼ばれるお腹の肉を切っていきます。ここから中トロやトロが取れます。それ以外の部分は赤身です。
それからコロを切り分けていきます。コロとは、固まりと言う意味です。自分の手を定規代わりに使って、同じ長さの固まりに切り分けます。この長さは調理人次第ですが、均等に切ることが重要です。
次は、ロインから皮を取り除いていきます。刃が細く、細かい作業に向いている身卸出刃に持ち替えます。柳刃に似ていますが、よりコントロールがしやすいのです。
皮の次は血合です。血合の色は濃く、他の部分とははっきり違うことが分かります。筋肉の一種です。血合には、たくさんの鉄分が含まれており、とても美味しいです。なかなかレストランではメニューに出てきませんが。僕はこの部分をラーメンに使います。
これで、お腹ロインをコロブロック3つ、血合3つに切り分けました。さらにサクにします。
サクを作る(2)
まずはブロックをよく見て、どれくらいの厚さかを確認し、いくつに分けるかを考えます。1つのサクから10〜15スライスを作ります。これくらいの分量は1〜2人に最適な量です。お客さんにとって使いやすい分量になるように気をつけています。
ここでの注意点は筋肉です。マグロにはたくさんの筋肉があります。息をするために泳ぐからです。マグロは切られた後も泳ぎを続けます。
また、マグロの温度が急速に上がった場合は、中心部から自身の温度を上げていきます。日本語で焼けマグロと呼ばれる現象です。コアリングする際に焼けがないかチェックをします。マグロは釣られたらすぐに苦しむことなく殺されなくてはなりません。そして、すぐに保冷が必要です。焼けが発生すると、缶詰されたマグロのような、とても白い見た目になります。
柳刃は細く、長い形をしているため、とても正確に身をサクを切り分けていくことができます。刺身のスライスのために、この包丁を使いますが、サクブロックのためにも使えるのです。
尻尾の部分は筋がたくさんあるため、サクを作るのは難しいです。筋や腱を取り除かなくてはなりません。この部分からは肉を削り取って使います。
ざぶとんの部分も、同様にサクにしていきます。
お腹ロインを、赤身、さんかく、筋、トロ・中トロに分けることができました。
骨部分
次は骨です。骨は、大抵出汁に使います。天然コラーゲンと良い味を含んでいるので、スープに最適なのです。骨の周りについた肉はスプーンを使ってこそげ取ります。この肋骨の間の肉は、中落ちと呼ばれます。
襟部分にもたくさんの肉が付いています。こちらも可能な限りこそげ取っていきます。
背骨や肋骨以外の骨は、キッチンバサミでとても簡単に切ることができます。包丁で切るより安全です。背骨は1つの大きなピースではなく、骨と骨はゼラチンの詰まった部分で分かれています。ゼラチンの場所を見つけて、その間に包丁を入れて切ります。
全ての骨を集めてその表面をオーブンで500℉で7〜10分焼き、ラーメン出汁を取っていきます。表面だけを焼くことで味が柔らかくなります。
”もったいない”精神と持続可能性
僕の信じている持続可能性とは、全てを使うことに繋がっています。僕の考えでは、何を獲るのはよくて、何はいけない、ということではありません。
なぜそう思うかと言うと、一般的に海鮮物はたくさん無駄にされているものがあることに気が付いたからです。だからこそ、僕は普通なら捨てられるような部位でもお店に出し、販売することを始めたのです。
特にマグロは、重さの40%は骨や襟などで、ゴミだと考えられています。僕たちは、他の人々がゴミだと言うものも、ラーメンや他の料理を作るために買い付けます。
もっと多くの人々が”もったいない”と言う精神で行動すれば、漁獲量は少なくて済むでしょう。これこそが、僕たちの促していきたい持続可能性なのです。
■引用元
海外の反応
・マグロの大きさには、いまだに驚かされるよ!これは、相当大きいやつだね。そしてもっと大きいのがあるんでしょ(笑)。びっくりするわ〜。
・あああ、マグロ食べたい。
・マグロの赤さはルビーみたい。血のような、血のような、ルビー。美しくて、そして・・・何だろう。ちょっと魅惑的。
・僕の人生にマグロは必要ないだろうけど、参考になったよ。ありがとう。
・アメリカで相当な量のマグロが無駄にされていることを考えると、本当に馬鹿馬鹿しいよ。マグロの頬は最高の部位なのに、アメリカではゴミだと考えられているんだ。
・間違いなく捨てるところがない。素晴らしい。
・マグロは、私たちがもっと保守的になるべき肉の1つだよ。牛とかと違ってね。なぜなら絶滅寸前なんだから、買う時にその責任を忘れないように!
・よくできました。彼は食べ物の価値がよく分かっている。
・もはや芸術の域
・これを見続けていたら、絶対にベジタリアンになれないわ。
・マグロは数年の間、食べるのをやめるべき。そして、マグロの生息数がある程度になるまで戻さないと。それこそが賢明なことだと思う。寿司は盛り上がって、海は空っぽになる・・・。
・彼が、どんな包丁を使って、それがなぜなのかを説明してくれるのがいいね。素晴らしいビデオ!レストランやスーパーで見かける切り身の魚の切られる過程が見られて、興味深い。
・私のようなベジタリアンでも、この技術は素晴らしいと思える!
・なんだかマグロ丸ごと食べた気分・・・。
・これは高価なマグロだろうね。
・魚やその切り身を本当に大切にしている人だと思うわ。
ひとこと
牛も捨てるところがないと言われてますよね。鉄腕DASHの0円食堂でも入手難易度高クラス
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コメント
実家は酪農やってるが、ドナドナされていく牛は涙を流すんだよ。
外人さんにはこれが欠けてるケースがほとんどだからなあ
外国の魚の廃棄部分の多さは眩暈がする
日本の食文化に乗っかっておいて食べ過ぎは横暴論理で草も生えん
なら、なおさらクジラの数は管理して制限しなきゃね。歯クジラは魚食べるし、髭クジラは魚と餌を取り合っているから。
もちろん絶滅危惧種とかは別にして。
本当に理解してるの?
味の分かる漁師達は食ってたし、漁師町では関係者しか食えないこれこそ地元でしか食えなかった名産品だぞ。
そのようなアホな事が言われるようになったのは、カツオ節に向かなくて、脂身の多い部分を大量に捨てるようになってからだ(カツオの話だけど)
いわゆるツナも本マグロも知らない時代だ。
言っとくけどカツオの腹もおいしいぞ。
日本人も捨ててた?それはカツオ節工場が繁栄した時代に生まれた勝手な話だ。
あれはプラスチックが実用化されるまで重要な素材だったんだぜ
鯨油で乱獲してた白人共はバイオリンの弓が何で作られてるかも知っとけよな
あんたの前では冷凍になってるだけで
他所じゃびっちびち跳ねてるかもしれんぞ
肉食ってろよ
この人も高い意識でやってるとは思うけど
漁師さんだって若いマグロじゃなくて大きく育ったマグロを釣りたいのにさ
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