概要
進化し続ける日本のハサミ
日常的に使われる道具であるハサミから、日本文化を覗いていきます。
握りハサミ
U字の握りハサミは2,000年前にヨーロッパで発明され、中国を経由して6世紀に日本にやってきました。世界では、羊の毛を刈るのに使われていましたが、その後洋バサミに取って代わられ、現在では握りハサミは日本以外では、ほとんど使われなくなりました。
静岡にある久能山東照宮では、17世紀の将軍・徳川家康が使っていたハサミが保管されています。洋バサミ1つと、握りハサミが2つ。家康が用途によって、ハサミを使い分けていたことがわかります。
江戸時代には、ハサミは庶民の間にも広まりました。浮世絵には、握りハサミで髪の毛と爪を切る女性の姿が描かれています。
握りハサミの用途
握りハサミは耐久性に乏しく、固いものを切断することには向いていません。ですが、日本人がこれを使い続けるのは、指の動きと連動するため正確にものを切ることができるためです。
握りハサミは、様々な用途に合わせて、非常にたくさんの形と大きさが作られています。矢の羽根を切るための握りハサミでは、端から端まで30cmという大きさのものもあります。
正確な作業を要求される和菓子作りにもm握りハサミは使われています。
また、着物の布を裁断するため使われる握りハサミは、刃の部分が非対称になっています。片方の刃は丸くなっており、布を断つ際に下側に入れると、布地を傷つけることがありません。もう片側の鋭くなっている側を下に入れると、糸を切ったりするのに便利です。とても良く考えられたデザインなのです。
また、フィルムの編集室でも握りハサミは重宝されています。ここでは、切断するスピードと正確さが要求されるため、編集者たちは好んで握りハサミを愛用しています。切るだけでなく、握りハサミの刃でフィルムにメモを書き込めるのです!また、切ったフィルムをつなぎ合わせるのにも便利です。
昔に使われていた握りハサミ
江戸時代から昭和期までに使われた握りハサミ数種類をご紹介します。
あるハサミは、片方の刃の先につまようじのようなものが付いています。これは昔ながらの製本(糸で綴じてあるもの)用に使われてきました。つまようじのような刃先で穴を開けるのです。そこに糸を通していき、不要な糸をハサミで切るのです。
次は、小さな小さなハサミ。指くらいの大きさです。こちらはお金を呼び込むようにという願いを込めて、お財布に入れて持ち歩いていました。幸運のお守りなのです。
日本では、ハサミはその鋭い刃から、良くないものを断ち切る象徴と考えられてきました。
洋バサミ
西洋で使われてきた洋バサミも、日本に渡り、独自の進化を遂げています。
19世紀の終わりに、日本で初めて洋バサミが作られました。日本で洋服がよく着られるようになってきた頃です。洋服は、薄い布地から作られることが多く、カーブに切断することが多いため、握りハサミでの作業には向きません。洋バサミが最適なのです。
日本刀と洋バサミ
19世紀後半に作られたある洋バサミには、それを作った刀匠・弥吉の名前が彫られています。侍の時代が終わり、刀を作る仕事が無くなってしまった弥吉は、日本刀を作る技術を生かして布裁ち用の洋バサミを作りました。
日本刀は、決して壊れず、曲がらない、そして鋭い刃を持つことで有名です。その断面を見てみると、中央には柔らかい鋼、そしてその周りを固い鋼が囲んでいます。
洋バサミは、固い鋼が柔らかい鉄の上に層になっています。鋼部分が刃になるためよく切れますが、鉄が大部分なので動かしやすいのです。また、この組み合わせのため、壊れにくくなっています。
北島和男さんは、洋バサミを手打ちで作っています。,000℃まで熱された金属を、金槌で叩いていくことで、鉄と鋼を融合させていくのです。この技術は、刀づくりからきているものです。刀づくりの技術が生かされた日本の洋バサミは、鋭く、弾力性があります。
花バサミ
花を切るのに使われる花バサミは、指を通す部分が大きな輪状になっています。こちらは、チョキチョキと枝を切るのに適した作りなのです。
花バサミ職人である川澄巌さんは、この道50年のベテランで、彼の作るハサミがいかに素晴らしいかは、ハサミの奏でるチョキチョキという音でわかります。
音の秘密は持ち手部分にあります。持ち手の輪っか部分とハサミ本体の間にある隙間が、チョキチョキという鋭くて歯切れの良い音を作っているのです。この隙間が無いと、音は鈍くなってしまいます。
川澄さんは「この音によって、使い心地が変わってくるんです」と話します。「そして、この隙間のおかげで、長い間ハサミを使っても疲れないようになっています」
川澄さんは、持ち手を金槌で叩いて作り、その誤差は1mm以下。まさに職人技です。
切れ味だけでなく、音を楽しむ―それこそが、日本のハサミを使う喜びでもあります。
新しいハサミ
日本で今年、約100万本売れたハサミをご紹介します。こちらは、段ボール、タオルなどを楽々切れてしまうのです。こちらのハサミの秘密は、刃の形。刃が一番切れるのは、角度が30度ということに目をつけて作られました。どの角度にしても30度で切断することができるようになっています。
紙切り芸に使うハサミ
林家正楽は紙切り芸を得意としている落語家で、42年間この芸を行っています。紙切りは寄席で人気のある演目です。お客さんからのリクエストを聞き、下書きなど無しに、その場で作品を作っていくのです。
林家正楽は、初代以来、紙切り芸を得意とした落語家が引き継いできた名跡です。藤娘や動物などはよくあるリクエストですが、彼はそれを見事にこなしていきます。
彼は、特別な店で買った、洋バサミを利用しています。「僕はこのハサミを25、6年使っています。あまり綺麗に使っていないから、少し錆びていますが。新しいハサミを買うと、指になじむのに時間がかかるので、良く知ったハサミを使っているんです」
「ハサミを買うとね、先ずねじを緩めるんです。自分に一番あったところまでね。僕の仕事で重要なのは、スピード。ねじを緩めると、遊びができて、良く動くんです。」
ねじを緩めると、刃の間が少しだけ広がり、これによってハサミの動きがスムーズになり、より早く動かせるようになります。
彼にとって一番のポイントとなるのは、ハサミの先端です。ハサミの先端だけで切ることで、より早く切ることができます。そして、ハサミではなく、紙を動かしていくのです。これらが美しい紙切りを行う秘訣です。
美容師のハサミ
かつてビダルサスーンサロンがヘアカットにおいて革命を起こしました。今、日本のヘアカット技術にスポットライトが当たっています。
そして、日本のヘアスタイリング用ハサミは現在世界最高峰だと言われています。
青山にある美容室にて美容師さんにハサミについてお話を聞きました。
「日本のハサミは、持ちやすくて、扱いやすいです」
彼は、3種類のハサミを持っており、そのうちの1つ、濡れた髪を切る用のハサミを仕事中のほぼ90%で使用しているそうです。
このハサミは持ち方が特徴的で、手のひらを上にして下の輪の部分に薬指を通します。輪についたひっかけ部分を小指の上に乗せた状態です。上の輪の部分に親指を少し通します。そして、手のひらを下に向けます。この状態でハサミを使います。親指を動かすと、切ることができます。
千葉県松戸市にある会社では、ヘアスタイリング用ハサミを作っています。従業員は35人の小さな会社ですが、デザインから製作、販売までを行っています。ユニークな商品は、支持を受け、多くのリピーターを抱えています。そして、日本国内外でいくつもの賞を受賞しています。
社長である水谷裕一さんは、顧客がどんなものを欲しているかを常に大切にしていると言います。「美容師によって、技術もそれぞれですからね」
この会社のハサミを愛用しているという吉祥寺にある美容室の美容師さんは、多くの種類のハサミを用途に応じて利用しています。「髪を梳く場合でも、ハサミはとても大事です。ちょうどいい力加減で行わないと、髪自体も傷んでしまいますから」
この会社の作り出すハサミが優れている理由には、材料に特別な鋳造鋼を使っていることと、職人技で作り上げる形があります。微妙なカーブを人の手によって、作り上げているのです。
また、人気の理由には、ここにしかないデザインだから、というのもあります。1つ1つのデザインが、手の動きに沿って、そして快適な動きになるように考えられて作られています。
6年前に製作されたあるハサミは、親指を入れる輪の部分が360度回転するようになっています。これによって、どのような角度ででもカットすることができるのです。
このハサミは、16の部品からできています。その中には、ボールベアリングが入っています。これがハサミと親指のリングを繋ぐ部分に入っており、スムーズに動かす秘密なのです。
「このハサミを使うと、櫛の位置を変えたり、手首をひねらなくても切れるので、便利ですね」美容師さんは話します。
日本のハサミは、それを使うプロの要望を聞いて、進化し続けているのです。
■引用元
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海外の反応
・午前4時なんだけど、見出したらはまってしまった・・・!興味深いなあ。
・素晴らしい内容だね。勉強になったよ。
・興味があって、美容師用ハサミを調べてみたんだけど・・・$800~$900くらいの値段だったよ。高いけど、欲しい!
・↑ うんうん、プロ向けならそれくらいするよね。
・高品質なハサミが欲しい!!
・ハサミの奥深さに気付いてしまった・・・。
・ハサミのデザインって、すごいよね。シンプルで使いやすい!
・ハサミって馬鹿にしてたんだけど、このビデオを見たら、色んな用途のハサミがあって、様々な種類のハサミがわかるようになった!
・ハサミって、ヨーロッパじゃなくて、中東で発明されたものだと思うんだけど・・・。
・面白い話だった。モンタナ住みの私のお気に入りハサミは、U字握りバサミと花バサミだよ。いっつも使ってる。
・新しいハサミが欲しくなってきたー。すっごい使いやすそうなんだもん。
・日本のハサミって、すごく性能がいいよね。
・握りハサミは、パキスタンでもよく使われてるよ。うちの母は色んな種類の握りハサミ持ってる(笑)
・ハサミについてのドキュメンタリーがここまで面白いものだったとは!
・スコットランドでは、まだ握りハサミを羊毛刈りとか、魚釣りとか、色んなことに使ってるよ。
・勉強になる内容だった。教えてくれて、ありがとう。
・イギリスでも握りハサミ作ってるけど・・・。日本でだけじゃないよ!
・日本の刀は絶対折れないなんてことは無いよ!むしろ、その反対だと思う。デリケートだよね。
・日本のモノづくりって、すごいね。尊敬しちゃう。
・あああ、これを見てたら高いハサミが欲しくなった!チョキチョキって、切る時の音がいいよね。
・日本が作ると、どんなものも素晴らしくなるんだなあ・・・。
ひとこと
めっちゃハサミ欲しくなりました!!!
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コメント
原始人や他の動物の生態調査結果みたいな書き方w
冷却してるのかな?
外国人にもおすすめしたい。
鋏は元々挟むものだったから、鍛冶で使う金鋏が元、なので挟むのでハサミ
錐は切っ先が錘(スイ)体だから、切るわけじゃないとか的外れもいいところ
趣味でもプロ用のやつとか手にしても多分使いこなせなくて安いやつの方が良くなるものなんですよね(笑
> 原始人や他の動物の生態調査結果みたいな書き方w
ガイジンの潜在意識下の認識書いちまっただけだろ
人間は基本白人のみで黒人やアジア系は動物寄りと白人警官の行動見れば分かるだろ
あーチョウセンは昆虫の亜種だって
薄い生地でも厚い生地でも生地が逃げる事がなく真っ直ぐ切れる
同じ刀工の握り鋏は下ろしたての時は触れただけで糸が切れるという切れ味だった
鋼の刃物はやはり日本製が一番
日本剃刀愛用者としては海外製品にたまに浮気するけど やはり 元にもどる 元の鞘に
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